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2005年10月18日 (火)

私的録画補償金返還の経緯に見るSARVHの問題点

'05年6月に初めて私的録画補償金の返還が行われた事は、ニュースでも話題となったのでご存知の方も多いと思う。

その時の経緯は、申請者によって「私的録画補償金管理協会への返還請求」で公開されているのだが、ご覧になれば分かるとおり、私的録画補償金管理協会(SARVH)側からの回答内容については一切公開されていない。
これは、SARVHが公開を拒否したためである。

しかし、SARVH側から公開を拒否するという事に対しては、どうにも納得がいかない。
そもそもSARVEは「社団法人」であり、一般的に言う公益法人(公益に関する事業を行う団体)では無いのか?
そうであれば、むしろ特別な理由が無い限りは積極的に活動内容を公開し、自らの活動の公明性を明示するべきではいのか?

返還時のやり取りの内容が手元にあるのだが、SARVHの対応には思わず首を傾げてしまう。
やり取りの流れは以下のようなものだ。
申請者:やり取りの内容を全面公開したい。
SARVH:個人とのやり取りはプライバシーに関わるため公開を前提とすべきではないと考える。
申請者:今回のやり取りでの個人情報は私に関するものなので、私自身が了承すれば問題ない。
SARVE:返還委員会において、個別の返還請求に関する書簡等については一切公開を認めないこととした。

上記から分かるように、SARVHの主張は一貫性が無い。
最初はプライバシー保護のためともっともらしい回答をしたものの、その主張が無意味である事を指摘されると、態度を一変して理由の説明も無く一方的に公開拒否である。
どうやら、なにがなんでも公開させたくないらしい

この話には、さらに先がある。
申請者の最後の文面には「承諾がない場合には当方で作成した要約、承諾がある場合には、全文を公開することとします。」と書いてある事にお気づきだろうか?
にもかかわらず、現在はSARVH側の回答が一切公開されていないのは、SARVE側から以下のような連絡が来たためである。
師尾様が公開する理由を述べておられるにしても、この公開は著作権法上の問題点を生じています。すなわち、この文書は当協会が作成したものであり、文書の著作者は当協会であります。当協会が承諾していないにもかかわらず、当協会作成の文書を師尾様が一方的に公開することは、著作者人格権等の侵害になると考えております。』(原文のまま)
つまり「SARVH側からの手紙はSARVH側に著作権があるから、許可無く公開する事は著作権を侵害する」と主張してきたのである。

しかし、このSARVH側の主張は正当性を欠いている。
SARVH側からの手紙は著作物の条件を満たしていないため、主張できる著作権など存在しないからだ。

そもそも著作権法による著作物の定義とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」である。
つまり、著作物とは創作物なのである。

手紙の内容が著作物として認められた判例というのも確かに存在はしている。
通称「三島由紀夫の手紙事件」がそれにあたるが、これは判決文(下記)にもあるように、手紙の内容に創作性があると判断されたためである。
本件各手紙には、単に時候の挨拶、返事、謝礼、依頼、指示などの事務的な内容のみが記載されているのではなく、三島由紀夫の自己の作品に対する感慨、抱負、被告福島の作品に対する感想、意見、折々の心情、人生観、世界観等が、文芸作品とは異なり、飾らない言葉を用いて述べられている。本件各手紙は、いずれも、三島由紀夫の思想又は感情を、個性的に表現したものであることは明らかである。以上のとおり、本件各手紙には著作物性がある。

これに対し、SARVHからの手紙の内容は、補償金返還に対する手続きのための説明や質問に対する回答といった事務的な内容であり、創作的な表現の入る余地など何処にも無い。(もしも創作的な表現で回答されたら、それはまた別の意味で問題だが)
それから考えれば、SARVHの手紙には著作物性など無く、著作権の主張は見当外れなものである。(第一、著作物として保護する理由や必要性が何処にある?)

この件に対して一番危惧するのは、著作権法に基ずく活動を行う筈のSARVHが、著作権法に対する誤った認識を振りかざして要求をつきつけてきたと言う点である。
このような事があると、自分達の理屈を通すためには平気で誤った法解釈を使ってくるのではないだろうかと疑わしくなる。

権利団体がipod等のデジタル録音機器に対して私的録音補償金の対象に指定する事を要望しているのだが、果たしてそれは著作権法の正しい解釈に基づくものなのだろうか・・?

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